
2004年10月
やまべ幼稚園園長(現:理事長)
後藤和枝
家庭から幼稚園へ、初めての社会生活への出発となるこの年齢の成長は、心も体も日を追って進むのが分かるほどに速い。
三歳は三歳の成長をし
四歳は四歳の成長をし
五歳は五歳の成長をする
それぞれ得意な事をしては喜び、不得意な事にも恐る恐る挑戦し、「みんなが出来るのに〜」と、がっかりしながらも頑張ってみたりして育ってゆく姿、遊ぶ姿を見ていると、それぞれが同じ事をしながらも、子供同士で見つめ合い成長している姿を見せてくれる。園生活の様々な分野でお互いに教え合い話し合い挑戦している一人一人がいる事を、見ることが出来る。
遊具の使い方一つ採ってみても、三歳は三歳の力で、四歳は四歳のやり方で、五歳は、個人的に差はあるにしても、喜びと自信に満ちてやっている。但し決して独り占めにしたりはしていない。むしろ自分がやって見せてから譲っている。
この素敵な子供たちは、園庭でホールで中庭でと、それぞれに好きな所を見つけては楽しんでいる、共に成長している、共に笑っている。
膝から血が出ていれば走り寄って先生を呼びに行き慰めている姿、大好きな粘土をおしゃべりをしながら楽しんでいる姿、幼稚園が一つの輪に見える。
私達が縦割り活動を始めた当時は、縦割りという言葉は教育の現場では使われてなく、縦割りを意識した取り組みもされていなかった。しかし家庭そのものは縦割りの構造である。家庭から幼稚園へ、そこに戻ったらきっと好い成長が出来るに違いないと、私達は縦割り活動を始めた。日本の幼稚園で自由保育という形が生まれ始めた頃である。
縦割り活動の中心となるものを「模索」し長い時間をかけて、絵本を中心に置く事に決定した。創立以来絵本の読み聞かせが定着していたので躊躇することなく「絵本」を中心にして始まった。
日本中におもちゃや絵本が溢れている時に、一冊の絵本を丁寧に心ゆくまで読む。読めば読む度に「新しい発見」がある。子どもにとっては発見は毎日の事、教師もまた新しい発見を見つけることができる。これが『一年間に一冊の絵本を』という試みの中心となる効果であり、ここから枝葉が広がっていく。
1975年(昭和五十年)記念すべき第一作目「みにくいアヒルの子」を迎え、それ以来休むことなく現在まで続いている。
膨大な絵本の中から『一冊の絵本』を選ぶというのは困難な作業でもあったが、幸いにも優れた教師集団、バックアップしてくれる父兄。また、質問に答え助言してくださったキリスト教保育の先輩達(自由保育の実践者)また宮城教育大 中森孜郎教授(教育学)、垣内幸夫教授(音楽理論)の指導力は大きく教師の力を存分に引き出していただいた。
代々の教師は変わっても「一冊の絵本」の思いは引き継がれ、更によりよい工夫が加えられ、現在、年間を通しての絵本への取り組みは次の様に行っている。
四月〜五月前半
グループでやさしい絵本から読み聞かせ(絵本が楽しくなる時)
五月後半〜七月
各グループで当年の一冊の絵本の素話を聞く
九月〜十月
何度も聞いて話のイメージを膨らませ、絵を描いたり、作品作りに励み、協同製作となる。
作業は自分のやりたい事をする。年長は理解し自ら活動する。年中年少は何度も活動を変えてみて、最後に落着く所で満足して活動する。
出来上がった作品を展示し、来てくれた父兄、卒園生にほめてもらい喜ぶ
十一月〜十二月
クリスマスを心ゆくまで祝う為に、一冊の絵本は休み。キリスト教幼稚園ですので、時間をかけて心を込めて行う。
一月〜二月
オペレッタを発表。
教師が十曲〜十五曲を分担して作詞作曲した曲に自分たちで考えた振り付けも含めて、歌い踊る。
三月
一年間の事を思い出し、年長は自ら自分をみがく。年中年少は、年長を送り出すことがあまり分からないが喜んで歌っている。
一冊の絵本が楽しくなるためには、毎日の(グループで)読み聞かせが基本になることを認識し、読んであげる。
こどもの好きな絵本を、雨の日も、天気の日も、風の日も、吹雪の日も、何事があっても毎日必ず「読んで読んで」の連発であり、教師にとっても大好きな宝物の絵本となる瞬間である。
とても楽しい時間。読んでもらっている姿は様々ではあるが、力が抜けて安心しきった姿、でもしっかりと聞いている事は確かで安心してみている。
今までたくさんの絵本と出会って来たが、どの一冊も子ども達が最高のものにしてくれた。
豊かな実りの秋には、四歳の子も五歳の子も三歳の子もそれぞれの力を出し合って、自分で描き創り、友達を誘い自ら励んだ協同作品、見事な出来栄えを家族や先輩の卒園生に見てもらい褒めていただき力づけられ大満足。
また寒い大雪の頃、先生方が作詞作曲してくれた歌を心ゆくまで歌い、自分たちで相談し自ら創った踊りで妖精のように表現して喜び合う。
こんな夢のような素敵な時を提供してくれる子供たちに感謝し、私達はこれからも縦割り活動は続けてゆくでしょう。
こども達のよろこびのために!